大半の専門業者は、新築木造住宅の防音室を造る際に、多量の重い資材を使い分厚い構造を構築しようとする。
これは木造住宅の耐久性や費用対効果、将来のリフォームの自由度を軽視するものだ。
取引先の建築士も多量の防音材を使おうとするが、私は手順が間違っていると思う。
一番大事なのはリスクの少ない間取りで最適な位置に防音室を計画することである。これがうまくいけば問題の半分は解決されることになる。
次に床や壁の下地構造を補強すること、建物の換気システムの音漏れリスクを小さくすることが重要だ。これによって格段に音漏れが減り、共振が減る。
間違ってもコンクリートを増し打ちして、そのうえに発泡材とベースパネルを載せるという浮き床工法はやってはいけない。
費用がかさむ割には共振するし、音響が悪くなる。それに経年変化で床のクリープが生じ、床鳴りの原因になりかねない。
地震で床のスラブが破損すれば、補修するのは大変なことになる。木造の軸組であれば補修は難しくはない。
リフォームなどの補修がしやすいのが木造の利点だ。これを損なうような工法はお勧めできない。
適正な建築計画が防音室の基本であり、前提条件となる。これがなければ音響・防音設計の効果が半減する。
言い方を変えれば、建築計画と音響・防音設計が調和することこそ、木造の防音室の本来の姿なのである。